ヒューマンドラマは好きですが、つい入り込みすぎてしまうので心に余裕があるときだけ観るようにしています。
それでも、メイドの手帖は自分の未来を切り開く力をくれるのでぜひ観てほしいと思います
すべての子育てをする親、仕事を頑張る人たち。シングルで子どもを育てている方へ。
あらすじ
暴力的な男から逃げ出した若い母親。頼る先もないなか、家の掃除をするメイドの仕事を見つけた彼女は、子供を養い、よりよい生活を築こうと奮闘する。
※ここから先はネタバレも含みますのでご注意ください。
メインテーマはDV
実話を元にしたしたフィクションなのですが、心が痛くなるようなDVシーンもあるため、過酷なシーンが続くと辛くて見続けるのをちょっとためらうときがありました。
リアルな見え方、過酷な描かれ方をしているのはきっと当事者目線でストーリーが進んでいくからだと思います。
主人公アレックスの目線、夫ショーンの思い、周りの第三者との関係性や気持ちもしっかりと描かれています。
DVは暴力だけではない
DVと聞くと相手を殴ったり、蹴ったりする暴力のイメージですが、アレックスは精神的暴力を受けていたので、あざやけがなどもなくDVとしての証拠集めや周りの人に認識してもらうのに苦労します。
もちろん、本人もDVという認識がないため自分自身が気づくまでにも時間がかかりました。
家を出てからいろいろな場所で学び、心理的、経済的にもDVを受けていたことを理解していきます。
何とか仕事を見つけたアレックス。
仕事内容はメイド。
しかも低賃金で給料がもらえても、すぐに安定は手に入らない。(ドラマ中はトイレ掃除と表現している場面もあります)ぎりぎりの生活をしながらメイドとして働く中で様々な人達と出会い、自分の未来のために行動していき、物語は動いていきます。
手元にあるお金であれこれと必要なものをそろえたり、もらった給料や出ていくお金を計算したり…
どんどん減っていくお金にアレックスの焦りや疲れが見えてきます。
どんなにつらくても上手くやろうと、ひとつひとつをこなそうとする主人公の奮闘と未来を見つめていく姿に励まされました。
DVって殴られることだけではない
アレックス自身がDV被害者だったことに気づくのは、家を飛び出してから。
「私や子どもが殴られたわけじゃないのに被害届をだすの?」
「本当のDVを受けている人が救われるべき」というアレックスにたいして
「じゃあ、DVもどきは?脅したり、怖がらせて従わせること」というソーシャルワーカーの言葉に自分も被害者であることに気づかされます。
「なんていうの?」と言葉を詰まらせるアレックスに「たすけて」と一言いえば良いことを教えてくれたソーシャルワーカーさん。冷たいようで実は優しかったんだね。
福祉サービスに対する不満が爆発
仕事はない、家もない…保育所の助成は仕事が決まってないと受けれない…
家を飛び出したアレックスは行き場所もなく、福祉サービスに相談するも、仕事がないことから助成やサポートが受けられないことを知ると「順序が逆じゃない?!」ってブチギレ。
スーパーでフードスタンプを使おうとすると店内放送で「貧乏人入りまーす」とアナウンス。
アレックスの後ろに並んでいた男性はあからさまに嫌な顔をして、舌打ちまでする始末…
こういった背景からか、アレックスの母ポーラは行政を信用していないフシがあります。
支援を受ける人が肩身の狭い思いをしてしまう世の中に悲しくなりますが、そういう人が一定数いる現実をしっかりと表現しています。
日本だってそうですが、ちゃんと助成を受けるための手順は複雑で一つでも足りないと受けられなかったりするんですよね。
家を飛び出したアレックスに待ち受けるのは絶望の連続
マディが車の窓から落とした人形を探すために路上駐車した車に後続車が追突し、唯一の居場所だった車を失い、マディのお気に入りの人形は別の車に轢かれズタボロ。
事故にあった車は路上駐車違反で違反切符を切られ、反則金が課せられ財布もからっぽ、家代わりだった車も失う。
少ない残金でマディのお人形を買いなおす姿に胸が締め付けられます。
踏んだり蹴ったりでくたびれてしまいますよね。
初めての裁判
マディーの親権をめぐり、初めての裁判。
ただでさえ毎日の生活があわただしい上に、お金がないため弁護士も雇えず裁判や法律の知識がないアレックスは判事や弁護士の専門用語にうろたえてしまう。
会話の流れについていけないアレックスは弁護士や判事の言葉がまったく入ってこず、弁護士たちの言葉が「なんたらかんたら」と言っている様にしか聞こえてこない。
アレックスの戸惑いが伝わってくる一面です。
話が分からないまま暫定的親権でマディがショーンのもとへ行ってしまう。
DVシェルターにアレックスは一人で戻り、初めて涙を流して自分を責めてしまう。
DV被害者のダニエルとの出会い
DVシェルターでであったダニエル。
アレックスとはタイプの違う彼女は意外にも優しかった。
DVシェルターに一人で戻り、家を出たことを後悔しかけたアレックスに一言
「壁を打つのは心理的虐待。奴らは噛む前に吠えるの、あんたを打つ前に壁を打つ。次はあんたの顔に決まってる」と自分事のように怒ってくれ、自分の体験を話してくれる。
「嫌なことされたことにちゃんと腹を立てなきゃ!」とダニエルが言ってくれたから
「つらいのは自分だけじゃない。戦わなきゃいけない」と気持ちを奮い立たせることができたのではないでしょうか。
「腹を立てた嫌なこと」については「レジナがメイド代を払ってくれず、仕事をクビになったこと」アレックスはこぼす。
そして、アレックスの仕返しのためにダニエルはレジーナの愛犬を誘拐してしまう。
でも、この時にレジナにこれまでの自分のいきさつと思っていることをぶちまけたことをきっかけにして、レジナとアレックスの距離が縮まっていく。
仕返しに犬を誘拐しちゃう「ちょっとイカれた友達」のダニエルだが、いつの間にかシェルターを出てパートナーのもとに戻ってしまう。
後日、ダニエルと再会したとき、人違い扱いされた上にDVの彼のもとに戻っていることを知ってショックを受ける。
ダニエルがパートナーのもとへ戻り、そういうことは珍しくないと聞かされてショックを受けるアレックス。シェルター管理人のハウイーはDVをするパートナーの元へ5回も戻ったと語っていた…
自分がされてきたことを振り返り、少しずつ言葉にして書き残していく。
DV被害者がパートナーのもとに戻ることは、不思議な事ではないことをこのシーンが大きく伝えてくれています。
人生をかえてくれるきっかけをくれたレジナとの出会い
感謝祭で夫との関係が終わったレジナ。
誰もがうらやむようなキャリアを持ち大きな家で暮らしていたレジナは夫との関係に悩みつつも妊活をしていた。
いろいろな事を試しながらなかなかうまくいかない妊活。結局代理出産で子どもを設けることになった。
しかし、代理出産ゆえか気持ちが追い付いていないのか、子どもに対して何も感情がわかない自分に悩んでいた。
ただただそばで話を聞いて、相手の気持ちに寄り添って…そこにいるだけなのに安心できる雰囲気がアレックスにあるようでレジナはゆっくりと素直な気持ちを話していく。最後に日給を払おうことを断ろうとしたアレックスに
「いいように利用されたらダメ、自分を安売りしないで。仕事は唯一あなたが信用できるものよ。他はアテならない」
仕事をバリバリこなす自立した女性であるレジナだからこそ、かっこいいと思うセリフです。
書き綴ったことで未来を見始めていく
夫からのDV、父の母へのDV、不安定な母親、失業…さまざまな困難を乗り越え、DV被害者として他の被害者たちを救う立場になっていくアレックス。
書き綴っていたことを形にすべく、諦めていた大学への編入の道を開き、新たなステージへと子どもと一緒に出発する。
テーマがDVだから、重めの内容でした。
DVって色々なパターンがあり、本人が自覚していないパターンが多いことやパートナーのもとへ戻ることは不思議じゃないことをこのドラマを通じて再確認することができます。
くじけずに最後まで観ることができたのはきっと、アレックスが子どもとの未来をあきらめていなかったからでしょう。
登場人物それぞれに軸があって、被害の程度や後悔、くじけてもそれぞれが少しづつ前向きに変わっていっているので、ただただ残酷でつらいだけの話ではなかったのがよかったと思います
また、マディのあどけなさと母アレックスの愛があふれるふれあいに心が優しくなる
アレックスはうまくいかないことばかりで、くじけそうなときもマディと接するときは優しいお母さんで、マディを見つめるアレックスの優しい表情には心が優しくなります。